見知らぬ土地で

Posted on 2012年1月11日

Jhumpa Lahiriの『見知らぬ土地で』を読みました。
『停電の夜に』、『その名にちなんで』に続く三作目の短編/中編集です。

前二作と同様、今回の作品でもモチーフとしてインドからの移民が扱われています。
故郷のインドを離れアメリカへ移住した人々の、異文化間で揺れ動く心の模様が淡々とした艶やかな文章で丁寧に描かれています。しかし、これまでの作品と決定的に異なり、本作では移民第一世代だけではなく、その子どもたちである第二世代の生活も描かれています。

サリーを着て故郷を離れた後ろめたさを感じたり、懐かしんだりして里帰りを続ける一世世代と、肌の色は褐色であっても洋服を着て英語を喋る二世世代。お互いに拠り所とする「場所」「存在」の違いから対立したり歩み寄ったり。

こ うやって言ってしまうと「移民」という大きな言葉で煙に巻かれてしまいますが、Lahiriがそれをメタファーとし、一貫して描いているものは、拠り所に する「場所」「存在」が時の流れと共に変わっていくことの切なさ、もの悲しさ、そして新しい可能性であると言えるのではないでしょうか。その兆候は第1作 目の短編集に収録されている「三度目で最後の大陸」に既にみられていたでしょう。そして、本作の二番目に収録されている「地獄/天国」などはまさにそのよ うな個人の拠り所の違いを「文化」と「世代」、そして「家族」を巧みに対比させることで表現しているように思えます。

改めて考えてみれば、 ぼくが初めてLahiriの作品を読んだのは10年ほど前のこと。あれから、10年経って人並みに年を重ねた訳ですが、その時の流れと共にぼくの拠り所も 少し変わったのではないでしょうか。実際に今回の作品を読んでみて10年前とは違うポイントに目がいったりしました。そういった意味では彼女の作品は10 年間隔くらいで読み返してみたくなります。

きっとその時は、無駄のないしなやかな文章が今まで気づかなかった新しい側面を見せてくれるような気がします。

Be the first to leave a comment

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です