アートディレクターの仕事とヒトの認知のことについて

Posted on 2012年2月17日

PVやショートムービー、広告など人に興味を持ってもらうための動画がたくさん存在している。そういった人の注意を惹きつけるものにはいくつかの共通点があると最近思い始めた。そして、その共通点は人の認知機能の特性を絶妙にとらえたものであるような気がしてならない。

昨年の年末、そういった思いからtwitter上で妄想をぶちまけたのだけれど、忘れないようにこちらにもメモしておくことにしよう。

(以下、twitterより一部改編して転載)

心理学の分野になるのかしら。解らないのだけれど、感情の予測と身体的な動きの予測は同じメカニズムによるものなのでしょうか?ぼくは感情予測と物性予測は 微妙に異なるメカニズムに支えられていると思います。根拠はないのだけれど、たぶん。ただ、それぞれは独立して別個に機能するのではなく、とくにヒトの行 為の予測には感情予測と物性予測の両方が相補的に働く必要があると思うのです。YUKIやきゃりーぱみゅぱみゅのPVを観ていると余計にその思いが強くな ります。

ここでいう感情予測とはたとえば、宝物をドヤ顔で破壊されてしまったヒトをみて、「ひどい!」と自分まで悲しくなってしまう能力の こと(共感や心の理論に基づく予測)であり、運動(物性)予測はマイケルジャクソンのムーンウォークをみて、「えー!!?」とか、お箸で豆をつまんでうま く口に運べる的な能力を指しています。そして、YUKIやきゃりーぱみゅぱみゅのPVにはこのヒトの予測機能を絶妙に裏切るような表現がバランス良く入れ られているように思えるのです。

大した話ではなく、単純なことなんだけれど、たとえば「イベントの会場、で、初対面のヒト、が、笑顔、で、 右手、を、差し出す」というようなコンテキストの場合、ぼくらは「握手するんだろうな」と予想して右手を出しますよね?これには恐らく共感と物性予測の両 方が使われているように思えます。しかし、ここでいきなり予測と違う行為をされるとびっくりしますよね。なんだかよくわからないけれど不思議だったり、印 象的な映像などには無意識だと思いますが、こういうセオリーが組み込まれているような気がするのです。YUKIのPVの一部逆再生やUNIQLOCKの場 違いな無表情などなど。ぼくはこういったムービーを「裏切りセオリーに基づく不思議系PV」と名付けることにしました。そしてこの名前に最もふさわしいで あろうムービーが、これです。

アートディレクターがどのような意図でこういった不思議なPVを作るのかは定かではありませんが、こういうことを踏まえて考えると、面白い!と思う作品の背景にはヒトの認知能力の根源を揺さぶるような仕掛けが巧みに組み込まれているのかもしれませんね。

 

(2012.6.1追記)

京 大の明和政子先生らの最新研究がNature Communicationsからpublishされました。先生らのご研究は「裏切りセオリー」に強固な示唆を与えてくれます。 Supplymental movieは必見です。赤い●が観察者の視点の位置を示し、注視時間が多いほど●がお大きくなります。

“Humans and chimpanzees attend differently to goal-directed actions”

http://www.nature.com/ncomms/journal/v3/n2/full/ncomms1695.html

 

(2012.6.13追記)

明 和先生とも共同研究をされている岡ノ谷情動情報プロジェクトの松田先生のご研究がBiology Lettersからpublishされました。とにかく興味深くて面白い内容です。「親近感」を覚える対象と「新規感」を覚える対象、そして、それらが ミックスされ親近感と新規感が同時に存在する“日常からの逸脱”を具現化した対象。その狭間で揺れる赤ん坊の様子が報告されています。なぜ、微妙におかし い対象にヒトは特殊な感情を抱くのか、その答えへのヒントが隠されていると思います。ぜひ、ご一読ください。母親と他人の狭間—赤ちゃんが示す「不気味の 谷」現象を発見—

Infants prefer the faces of strangers or mothers to morphed faces: an uncanny valley between social novelty and familiarity?

http://www.jst.go.jp/pr/announce/20120613/index.html

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