拝啓、ヘンリー・ダーガー様

Posted on 2011年11月25日

アリナさんのススメで先月23日から開催されている
ヘンリー・ダーガー展~アメリカン・イノセンス。純真なる妄想が導く「非現実の王国で」』に行ってきた。

9 歳から死の数年前まで執筆、作画したとされる彼の小説『非現実の王国で』は、彼が部屋を去った後、部屋の片付けに入ったアパートの大家によって発見され た。そこには子供を奴隷として虐待する暴虐非道な男たちを相手に、壮絶な戦いを繰り広げる7人の美少女姉妹の物語が、計15,000ページ以上にわたり綴 られていた。親との死別や施設での生活を経験し、生涯を孤独に生きたダーガーは19歳の頃から死を迎える数年前までの間、誰にも知られることなく膨大な数 の挿絵と共にこの作品を紡いでいたとされている。そしてダーガーは自分の死後、自分の創作物を捨ててほしいと望んでいたともいう…。

(REDonePRESSより引用)

理解されたいという強い欲求、
その欲求に諦めを抱いてしまった時の絶望、
強く信仰していた神への怒り。
切なさ。

アウトサイダー・アートとして高く評価されている彼の作品は内向的で激しい怒りやナルシズムなどが混在する不思議な気配が感じられた。

そして、ぼくがその片鱗を感じさせられたのは、何よりも「非現実の王国(In The Realms of the Unreal)」というタイトルからだった。ヘンリー・ダーガーの最も特異な表現手法は、全ての絵画の構成要素がトレーシングペーパーなどを用いて模写さ れているという点だ。ヴィヴィアンガールズをはじめ、花、動物などは彼が集めた膨大な雑誌、切り抜きなどから模写されている。「非現実の王 国」の登場人物は、現実の世界から連れてこられ、彼の妄想の世界に閉じ込められた存在だ。

そして、彼の抜け目ないところは、その世界 を「非現実」と意識的に定義し名付けているところだ。自分を認めない現実の存在をさらい、「非現実」と名付けた自らの妄想の中に一生幽閉する行為からは、「現実」世界に対する強烈な嫉妬/アンチテーゼを感じてしまう。生涯一度も作品の存在を告げなかったという点は、まさに現実世界に対する無 言の抵抗だ。それと同時に、どこまでいっても現実ではなく「非」現実の世界しか体現できない、という切なさ、現実へのコンプレックスも感じられた。

莫大な妄想を膨らまし、その中に引きこもり続けたヘンリー・ダーガー。
彼が何を思い、現実の少女たちを妄想の中に幽閉し、物語を展開させたのか。
もはや誰もそれを知ることはできない。

けれど、ぼくは今回の展覧会で作品のみならず、彼の激しい人間性をまざまざと見せつけられたような気がした。

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