神経科学大会後日談

Posted on 2011年10月24日

9月14日から17日にかけてパシフィコ横浜で日本神経科学大会が開催されました。
今年のテーマは「こころの脳科学」。

脳科学という言葉がメディアに取りざたされてから久しく、テレビや雑誌を通して多くの人が脳に興味を持ち、その不思議を楽しむ機会が劇的に増えました。

け れど、その反面、「脳科学」という分かりやすいワードと共に疑似科学、時には神経神話とまで揶揄されてしまう多くの誤解も生まれてしまいました。テレビな どのメディアで脳科学のトピックを扱うのは危険なのではないか、一部ではそのような議論も生まれ、研究者とメディアとの溝が広がってしまったこともありま した。

そもそも、脳を研究するとはどういうこと?

研究者とメディア、大衆とのディスコミュニケーションが多発する昨今だからこそ、その問いに日本の神経科学者たちが真正面から向き合う必要があったのかもしれません。

日 本神経科学学会は会員数が5000人を超え、神経科学をはじめ分子生物学、細胞生物学、生物物理学、解剖剖学、生理学、生化学、薬理学から、心理学、行動 科学、工学、数学、さらには臨床医学に至まで多様な学術領域をカバーする国内有数の学術コミュニティーです。その巨大学術コミュニティが「こころの脳科 学」というテーマの下、盛んなディスカッション、研究交流を図ったことはとても意義があったように思えます。

大会期間中は研究者同士の交流のみならず、脳科学が誤解されてしまいがちな社会と研究者との接点を模索する企画、若手研究者のキャリアパスセミナーや国際交流会、非公式ですがサイエンスカフェなどが開催されました。

そ の中で、特に印象的だったのは横浜サイエンスフロンティア高校に通う高校生を対象に学会を案内する企画でした。講談社Rikejoのみなさん、脳科学若手 の会のみなさんと協力し、ぼくも一緒になって会場を案内しました。学会会場に制服姿の高校生というちょっと珍しい組み合わせということもあり、会場では企 業ブースの担当者様やポスター発表をしている研究者の皆さんがたくさん声をかけてくださりました。
みなさん、積極的に製品のセールスポイント(新規顧客開拓!?)や研究のポイントを分かりやすく説明してくださり、高校生も熱心に耳を傾けていました。最 初は緊張していたようで、こちらから会話を促しましたが、中盤からは何も言わずともポスターの前で活発な質疑を展開。制服を着ていなければその姿はさなが ら若手研究者です。ぼくの研究内容にも鋭い質問を投げかけてくれました。10代のちょと不安定な、けれど、深い感受性のような煌めきを感じました。そし て、そんな高校生の姿を見て、その煌めきが目を輝かせてプレゼンする研究者にもあることを確認することができました。

研究発表を聞くだけではなく、第一線で活躍されている研究者と直接会話する機会も設けられました。ご協力してくださった先生は山中伸弥先生、Karel Svoboda先生とそうそうたるメンバー。ぼくも一緒になってお話を伺いました。
英語で質疑はむつかしいかなあ、と思っていましたが、そのうち勝手に英語で話しはじめ、もう本当にびっくりしました。短い時間でしたが、「研究とは何か」、「何に重きをおくか」などの活発なやり取りが行われました。

後 日送られて来たアンケートでは学会の雰囲気が分かった、研究が心底好きな人たちを見ていて楽しくなった、英語の必要性を感じた、などの感想が寄せられ、高 校生の好奇心に少しは貢献できたかな、と嬉しくなりました。特に本当に好きな研究をやっているんだ、という思いが伝わったことはとても嬉しく思いました。 (沢山の大人が顔を輝かせて想いを伝えれば、届くのでしょう。これは、きっと研究以外の分野でも大切なことに思えます。そして、ぼくはそういう人の顔を見 るのが大好きです。)
今回の企画ではぼく自身も、これからの日本のサイエンスを担っていくかもしれない若いみなさん(ぼくもじゅうぶん若いですが)の熱い情熱を感じ、いい刺激を与えてもらえました。

大会長の大隅先生、企画進行にずっとついていてくださった長神先生、講談社Rikejoのみなさん、また、高校生の知的好奇心をふんだんに刺激してくださった多くの研究者様、企業担当者様には深く感謝致します。

最後に、高校生との質疑でKarel Svoboda先生が仰った言葉に感銘を受けたので、忘れないように書き記し、駄文の締めくくりと致します。

「実験に技術的なハードルがある場合もあるかもしれないが、本当にいいデザインの研究は、たとえ自分が期待していた最善の結果ではなかったとしても、実験をすることで何らかの結果が得られるはずなんだ。」

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