ボーダレスなアニメイション

Posted on 2012年10月5日

“2D animation has, for some time now, taken a backseat to 3D computer graphics but John Kahrs has stated that although he does not believe they are ready to do a feature length film using the technique that it is a direction that they are eventually going to move toward and that Disney believes there is a strong future ahead for this technology.”

先日、Disney animation studioの新作、「Paperman」がyoutubeで公開された。ディズニーらしいシンプルなストーリーが、素晴らしい音楽と、モノクロで手描きタッチな3DCGアニメイションにより躍動的に描かれた本作は、公開からすぐさま大きな話題となった。音楽や演出は本当に素晴らしくて、感動してしまったのだけれど、それ以外にも妄想が沸き立ったので、まとめてみた。

Papermanの最大の特徴の一つ、それは2Dと3DCGという 異なるアニメイション表現手法を融合させた点だ。2Dアニメイションと3Dアニメイションを一つの作品の中で同時に使用する、というのは、珍しい事ではない。日本のアニメイションでも人物は手描きで、車やロボット、背景は3DCGで描く、というのはよくみられる手法だ。また、 3DCGで描かれたキャラクタアにセル画の質感をテクスチャマッピングにより貼付けることで、2D-3Dのハイブリットのようにする技法(トゥーンレンタ リング)は近年、頻繁に見受けられる。

タチコマ
( 思考戦車タチコマは手描きの人物とのマッチングを図るために、トゥーンレンタリングにより質感がセル画風に調整されています。「攻殻機動隊 stand alone complex」2002年 )

しかし、これらはあくまでも別々のキャラクタアを2dと3dで描き分ける、あるいはテクスチャとしてセル画の”質感”を3Dアニメイションに貼付ける、とい うことであり、本当の意味で手描きと3DCGの融合とは言えない。今回の「Paperman」の革新的なところは、新たなソフトウェアの開発により、文 字通り3DCGと手描き(※)を融合させることで一つのキャラクタア、作品を作った、という点にある。一部のショートアニメイションや 「Ghiblies episode2 」などで、もしかして??というような表現があったが、こういった手法の前例はないらしい。詳しい事は分からないが、恐らくとてもめんどうな作業になるからだと思われる。

ghiblies-3
(「Ghiblies eposode 2」2005年)

今回、ディズニーはそのめんどうな作業をサポートするソフトウェア”Meander”をEric Danielsらと開発したことにより、今までむつかしかった3DCGと手描きの合成をより効率的に処理できるようにしたようだ。

おおまかには

①3DCGでキャラクタアのモデリングを作成、アニメイションを付ける

②作成したアニメイションに影のテクスチャ、運動軌跡情報(motion-vector renders per-element)を付加

③運動軌跡情報に従い、紙のテクスチャを付加

④出来上がった3DCGにアニメーターがペンタブで手描きのラインを加える。ライン情報は運動軌跡情報に基づき3DCGの動きに自動的に付随するよう処理される。(←これが凄いところ。自動で画と画の間の動きを生成してくれる訳です。論文があります、PDFです 。Computer-assisted animation of line and paint in Disney’s Paperman http://dl.acm.org/citation.cfm?id=2343071 )

という流れで作画しているようだ。これはかなりすごい。そして、このソフトウェアについて調べているうちに、同じくディズニーが開発した”Deep Canvas”を思い出しました。

これはディズニーのアニメーター、Daniel St. Pierreさん、Glen KeansさんらがTarzan制作のために開発したソフトウェアで、 モデリングされた3DCGにアニメーターが手描き感覚で彩色できる、というものだ。3DCGにいかに手書きの要素を効率よく付加する、という点で Meanderと類似している。Papermanを監督した John KahrsさんはGlen Keansさんと共に3DCGの中でアニメーターの手描きをうまく活かすにはどうすればいいのか、ということを長年話し合っていたらしく、まさにディ ズニーに蓄積されていたノウハウがPapermanという形で結実したと言える。

3Dアニメイションが主流になってきた昨今、ディズニーア ニメイションスタジオからは2004年以降、ピクサーアニメイションスタジオからは1995年以降、手描きの2Dアニメイションは発表されていなかった。そんな3DCG全盛の海外のプロダクションから、従来の2Dアニメイションの手描きという手法を最新の技術で活かすような作品が発表されたというのは、ある意味とてもおもしろい。

本来、アニメイションとは複数の静止画像により動きを生み出す表現手法だ。そういった意味では、そこに描かれているものが3DCGであっても、手描きの2Dであっても、さしたる差異はないかもしれない。しかし、ヒトはその質感(雰囲気)の差異を敏感に感じてしまう。そもそも、元を辿れば、アニメイションは静止画の連続によって引き起こされる仮想の運動を知覚するヒトの認知能力、ファイ現象によって生み出される仮現運動の集合体だ。ヒトの知覚に大きく依存した表現であり、そこに人工的に描かれているものをヒトは敏感に知覚する(だからこそ、作り手 は、ヒトがアニメイションを自然に鑑賞できるよう細心の注意を払っているのだ)。とくに、3DCGによるリアルな人物描写は、不気味の谷などを生起させてしまいう問題がある。

そういった不気味の谷や、質感の差異への敏感性により、作品の面白みが霞んでしまうのは、もったいない。

ディズニーが新たに打ち出してきた最新のエンジニアリングを駆使したコンピューターグラフィクスと、昔ながらの手描きアニメイションの融合。そのボーダレスな方向性が、不気味の谷に縛られない、新たなCGアニメイションの方向性を打ち出すのではないか。「Paperman」は作品としての楽しみはもちろん、そん な期待感までも躍動させてくれる作品だった。

※(厳密にはペンタブで書いてデジタル処理しているので2DCGになります)

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